026502 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

デッスンの個人日記

デッスンの個人日記

第四章 戦乱 (後編)

第四章 戦乱(後編)
 世界には、話せる島、忘れられた島、歌う島と、三つの島にに囲まれるようにあるのが本島メインランド。
 西にはオークたちが小さな要塞を築いたオークタウン。その北部にあるのはエルフたちの故郷エルフの森、さらに北部には龍の墓場と異名を持つドラゴンバレー、灼熱の溶岩が噴出す火山、魔法の町オーレンと象牙の塔。
 東には南から、ウッドベック村とウィンダウッド城。北にある砂漠を越えると剣士の町シルバーナイトタウン。川を挟み、更なる北には水の都ハイネ、そして大首都アデンと神々の力を手に入れようと天空まで伸びた傲慢の塔。
 それらのほぼ中央にある街が大首都アデンではなく、小さな町ケントだ。
 税収入はケントの町と、ケントから南にあるグルーディンだけである。
 グルーディンは話せる島を行き来する定期便が出ており、スライムレース場、温泉町として有名であり、冒険者には必要不可欠な町であった。しかし、何十年か前にラスタバド軍の侵攻により、ほぼ壊滅状態までなってしまい、いまでは廃れた町となってしまった。
 そんな壊滅寸前の町にも希望はあるのだ。
 いまケント城を治めるディル王子は当時十代後半にもかかわらず、政治を完璧なまでにこなし、廃れた町にも活気が戻りつつあるのだ。
 完全な復旧まではまだ何年もかかるのだが、確実に一歩一歩、復旧しているのが現状だ。
 しかし、いまそんな現状が変わるか否かの問題に直面していた。

 ケント城がラスタバド軍に攻込まれ半時が経過しようとしていた。
 ラスタバド軍の数は約二百、対するケント城の兵力は約五十しかない。
 戦況は明らかだった。
 攻込もうと止まる事無く進軍するラスタバド兵と、防御のみで下がる事は無いケント兵。
 一方的に押される立場だが、次の瞬間ケント城内から次々と兵士が飛び出した。
 アデン城護衛に向かった兵士たちの面々だ。
「みんな! 待たせて申し訳無かった!」
 ケント城の扉を大きく開け、ケント城主ディルが叫んだ。
「遅れた分しっかり働こうではないか! フィールの部隊は前線に位置し、シグザの部隊は門を塞げ! サクラ、カオスの部隊は後方に一旦戻り体制を立て直せ! カイムは弓兵を集め前線の援護にまわれ!」
 激を飛ばしながら次々と命令を下すディルに一人の兵士が近づいた。
「ディル王子、フィール隊長ととシグザ総隊長の姿が見えません!」
「なに!?」
 先ほどまですぐ後ろに位置していた二人の姿がきれいに消えていた。
「ならばフィールの変わりをカオス、シグザの変わりをサクラが―――」
 入れ替わる様に別の兵士が近づき、
「ディル王子、サクラ隊長の所在が判明出来ません。恐らく最前線で戦っていらっしゃると思いますが……」
 その言葉にディルは少し肩を落とした。
 ……そうも簡単にいかないのが戦場ってやつか。
 すぐに気持ちを入れ替えディルは真っ直ぐと前を向き、
「ならば私が行こう! すぐにチームを組め!」
 ディルはおもてに出て、戦場の空気を見た。
 感じるのは人の生と死、まさに『Life&Death』だ。
 重い感じを全身に受け、ディルは大きく息を吸い腹の底から叫んだ。
「闇に生き、戦いしか知らぬ者を私は認めぬ! この戦いにて欲しているものは何だ!? 金か! 名誉か! それとも力か! そのようなものを欲して何になる! 我々は違う。さぁみな、心に魂という炎を宿し、AHEAD! AHEAD! GO AHEAD!!(進軍せよ!!)」
 右手に持つダマスカスソードを大きく振りかざすと同時に、戦況を変えようとみんなの雄叫びが上がった。


 ケント城裏側一階廊下。そこは今無人と化している。
 そんな中を突き破る様にいくつかの影が走りぬける。
 先を走るのは女性の姿。廊下に点々と備え付けられているランタンが光を生み、彼女を照らし出す。
 軽くて丈夫で有名なエルヴンチェーンメイルに身を包み、両腕にはブラインドクローをつけたカナリアの姿だった。
 彼女は歩みを緩める事無く、振りかえりもせずに廊下を一直線に走っている。
 後ろから追ってくる足音は全部で二種類。
 一つの音はほぼ無に等しく、聞き分けようとしないとすぐに消えてしまいそうな足音。もう一つは、その音に対しかなり大きかった。
 それが問題であった。
 大きいだけならいいのだが、その足音はただ大きいだけではなく重量という重みを持っているだろう。
 さきほど階段を上がろうとした時に、階段の踊り場で姿を現せたそいつは、飛ぶようにしてカナリアに襲い掛かってきた。
 灰色の毛並みに、人の指ほどの大きさを持った牙、ダイアーウルフだ。
 とっさに階段から離れ、廊下を突っ切った。
 なんとか成功したムービングアクセレーションで走る速度は幾分かは上がったが、相手をまけるほど早い走りではなかった。
 それでもカナリアは走り続けた。解決策など無い。ただ走ることだけを選択し続けた。
 ……何か策を考えないと……。
 カナリアが今いる位置はケント城の南側と北側を繋ぐ渡り廊下のため、左右に扉は存在しない。
 あるのは中庭を覗ける大き目の窓ぐらいなものである。
 ……中庭じゃ戦うにしろ狭過ぎる。
 ケント城の中庭の大きさは食堂の二倍ぐらい。さらには池や木があるため動ける範囲はもっと縮まるだろう。
 生憎、その池や木がカナリヤの味方になることはおろか、有利にさえしてはくれないだろう。
 仕方ないと心で舌打ちして足に力を込める。
 そんなとき一つの音をカナリアは捕えた。
 その瞬間、床を蹴った左脹脛に刃が刺さった。
「――ッ!?」
 痛みに気づく前にバランスを崩し、冷たい廊下の上を転がっていた。
 争う事も出来ずに二転三転するとようやく止まった。
 突然の事に少し目を回すが、左脹脛から激痛が走った。
 痛みの元を見ると脹脛の中心にスティングが突き刺さっていた。
 致命傷ではないと分かるが、もう走ることは出来ない。
 ゆっくりと刃の柄を握り、一気に抜き去った。
「ぐっ……」
 悲鳴を飲み込む。出血は思ったより酷くは無いが、カナリアは傷口に両手を当てヒールを唱えた。
 ほんの少しだけ痛みが和らぐのを感じるが、完治には程遠い。
 とりあえず止血にしかならないが、今の現状ではその程度のことしかできない。
 左足を庇いながらゆっくりと立ち上がる。
 ランタンで明るい廊下の先にはマグナディウスが右手を前に伸ばし不適な笑みを浮かべている。
 その傍らに白い歯を剥き出しにしたダイアーウルフも低い唸り声と共に居る。
 距離にして五十メートル。スティングは個人の能力により威力と射程が変わるが、平均的な能力であれば三十メートルが限界な距離になる。それをマグナディウスは五十メートルの距離を一発で命中させた。
 マグナディウスは腕を下ろし、一歩一歩近づいてきた。
 もはや走ることは無い。獲物はすでに手の中にあるのだから……。
 背中に冷たいものを感じた。悪寒という恐怖だ。
 両手に持つブラインドクローを構えるが、これが何の役に立つのだろうか。
 目線だけを辺りに回すが、役に立つようなものは何も見つからない。
 マグナディウスとの距離は残り二十メートル。
 そこでダイアーウルフは歩みを止めた。
 分かっているかのように自ら足を止めたのだ。しかし、剥き出しになった白い歯と、瞳はカナリアに向けたままだった。
 単身になって近づいてくる敵に、スティングを投げ返そうか考えながらも実行には移さない。
 むしろ移せないと言った方が正しいのだろう。
 距離は更に縮まり、十メートル……八メートル………五メートル………三メートル…………等々手を伸ばせば届く距離まで近づいてきた。
 頭一つ分大きなマグナディウスを見上げる形になるが、奴は一切身構える事無く無表情な視線をカナリアに向けていた。
 まるで哀れむようなその目に、カナリアは負けじと視線を返した。
 先に動いたのはカナリアだった。
 右手のクローを振り被り、一気に振り下ろした。
 しかし、クローは虚空を掻くだけで終わった。
 マグナディウスはたった一歩左にずれるだけで避けたのである。
 それを追うように左手のクローを水平に振り回そうとするが、今度は避ける事もせずに代わりカナリアの左腕を掴まれた。
 そのまま流れるように左腕を背に回され、間接業を決められた。
 左腕がねじれるように背に回され動く事が出来なくなった。
「こ……殺すならさっさと殺しなさいよ」
 左腕の痛みからやっと搾り出した声だった。
 強がりでもなければ諦めでもない。
「確かに、いまここで今お前を殺すのは簡単だ……だが――」
 マグナディウスの言葉が終わる前に、廊下の一部が外側から爆散した。
「来たか」
 爆散した場所はダイアーウルフが居る位置とはちょうど逆の位置にあたる。
 砂埃が舞い、その中から人の影が見える。
「遅かったな……フィール」
 姿を現したのはフィールだった。両手にブラインドデュアルブレードを持ち、ゆっくりと足を進めている。
 新たな標的が現れたことでダイアーウルフはマグナディウスの前で構え、毛並みを逆立て威嚇の意思を示している。
「その手を離せ」
 暗く、低い声だったがマグナディウスの耳にはしっかりと聞こえた。
「くっくっく……大層お怒りのようだな」
「聞こえているはずだ。その手を離せ」
「お前、自分の立場を分かっているのか?」
 マグナディウスはカナリアを盾にするかのように前に突き出した。
 しかし、フィールはそれもお構い無しに歩みを進めてくる。
「おうおう、たいしたことだ。ダイアーウルフ遊んでやれ」
 言葉とともにダイアーウルフが飛び掛った。
 人の顔など簡単に飲み込んでしまうほど口を大きく開け、フィールに食らい付く。
 しかし、フィールは身構えることなく、変わらぬ歩みでダイアーウルフに歩いている。
 まるで、ダイアーウルフが視界に入っていないかのように……。
 実際、フィールの目線にはダイアーウルフなど入っていなかった。
 じっとマグナディウスを見たまま、目線をずらさずに、右腕を挙げた。
 たった、それだけだった。
 まるで邪魔なハエを振り払うかのように挙げられた右腕にダイアーウルフが食らいつこうとした瞬間、ダイアーウルフは縦に斬れた。
 口先から尻尾まできれいに二つに分かれ倒れた。
 その光景にカナリアは息を呑むしかなかった。
 いくら強いからと言っても、ダイアーウルフを一撃で倒すのは見たことが無かった。
「ハッ! それぐらいじゃないと遊びがいが無いってもんだぜ!」
 カナリアを戦いの邪魔だと言うように弾き飛ばし、スティングを構えた。
 しかし、その時点ですでに遅かった。
 マグナディウスがスティングを構えるよりも早く、カナリアを突き飛ばすよりももっと速くにフィールは動いていたのだ。
 スティングを構えたマグナディウスは驚愕した。
 前方十メートルあたりに立っていたはずフィールの姿が無いのだ。
 戦闘中に敵を見失うことはアサシンのすることではなかった。
 物陰に隠れたわけでも、闇精霊魔法ブラインドハンティングを使われたわけでもない。
 ただ単純に見失ったのだ。
 それはマグナディウスにとってあってはならないこと事だった。
 ……どこへ行った!
 フィールを探そうと、顔をまず左に向けようとした時に、顔を向けるよりも早くに左横から異常なまでの気配を感じた。
「!?」
 とっさに顔を向けると、倒れそうになっているカナリアを支える人の姿が合った。
 誰のほかでもない、探していたフィール本人だった。
 倒れそうなカナリアを両手で支え、顔は伏せていた。
 マグナディウスはとっさに距離をとった。
 危険を感じたわけではない、本能で後ろに下がったのだ。
 五メートル近くを一跳躍で飛んだのはいいが、その距離は決して安全な距離とは思えなかった。
 なぜその行動をとったのかマグナディウスは唖然とした。
 ……何をオレはびびってやがる!
 ダガーを構え、真っ直ぐとフィールを見据えた。
 しかしフィールは、マグナディウスの行動に感心を持たないのか、カナリアを床にゆっくりと下ろすと、懐から布を取りだしカナリアの左脹脛にしっかりと巻きつけ、止血の応急処置。
 目に映るフィールは平凡な格好だった。
 しかし、その平凡さが逆に不気味に見える。
 なぜなら、今のフィールの姿にはスキが全くないのだ。
 ……そんなはずあるかよ。
 武器も構えないでスキを見せない相手など見たことが無かった。
 ましては、フィールは背を向けているのにもかかわらず。
 思考のなかで必死に否定しているとフィールが顔を上げた。
 そのことでマグナディウスは全てを悟った。
 自分が見失った理由、身を引いた理由、スキが無かった理由……まるで全てが一本の糸に繋がったように理解した。
 その全ての理由はフィールから発せられていたのだ。
 闘志でも、殺気でもない。別の何かがフィールから滲みでるように感じるのだ。
 ……なんなんだよこの感じは……。
「くっそ~!!!」
 左手で構えたスティングを雨のように投げ出した。
 しかし、フィールは避けようともせずに、右手でカナリアを支えたまま左手に持つブラインドデュアルブレード一本で防いでいた。
 ブラインドデュアルブレードを一振りするだけで甲高い音と共にスティングが弾かれていく。
「なめやがって!!」
 スティングを投げるのを止め、ダガーを構え突っ込んだ。
 距離は約五メートル。その距離を一瞬で詰め、ダガーを振り抜いた。

 しかし、手応えは無かった。
 マグナディウスがダガーを振り抜く前にフィールはカナリアを抱きかかえ、後方約十五メートルも跳躍していたのだ。
 かなりの距離を跳躍したにもかかわらず、着地はまるで羽毛のように柔らかく降りたのだ。
 床に足を立てるとすぐにカナリアを下ろし、
「カナリア、離れていろ」
 真っ直ぐとマグナディウスの方に顔を向けたままカナリアに声をかけた。
 それに対してカナリアはひとつ頷いて指示に従った。
 左足が痛むため、おぼつかない足取りで、ゆっくりと離れていく。
 やっとの想いでフィールから十メートル、マグナディウスからは約二十五メートルのところまで離れた。
 安全を得るにはもっと離れた方がいいのだが、安全よりもフィールのことが心配だった。
 やられてしまう心配はこれっぽちも無かったのだが、何か不安を感じさせるからだ。
「悪いがマグナディウス……お前にかまってる時間は無い。最初っから全力で行かせてもらうぞ」
 フィールはブラインドデュアルブレードを納め、代わりに腰に付けているポーチの中から筒状に丸まった一枚の紙を取り出した。
 その紙は変身スクロールだ。
 紙に封印されたモンスターと契約を結ぶ事により、使用者にモンスターの力の一部を使用できる特殊なものだ。しかし、封印されたもの全てと言う訳ではない。使用者の能力によって異なるのだ。
 フィールは紙を広げるとそこには魔法で書かれた文字の羅列が円を描くように並べられている。
 そして契約の言葉を口にした。
「我、力を欲することを恐れる者なり。しかし、我、力を使うことを恐れぬ者なり」
 広げられた紙が黄金色に輝きを放つ。
「古に封印されし魔界の王よ。一刻の時の力を放て! デーモン!!」
 変身スクロールから発せられた光はフィールを包み込む。
 あまりの光に目を開けていられなかった。
 しかしすぐにその光は弱くなり、消えていった。
 カナリアはゆっくりと目を開けて見ると、そこには身長約二メートル、紅く大きな翼を背に生やした魔界の王デーモンが立っていたのだ。
 「デーモン」かつて魔界全ての王なった魔族最強のモンスター。しかし、昔地上をも手の内に入れようと現れた。しかし時が悪すぎたのか、一人のウィザードによって魔法の町に建つ象牙の塔八階に封印されたと聞く。
 しかし、時折その封印が弱くなり、デーモンの力の一部が流出し、冒険者に災いをもたらすことがある。
 そんなデーモンの力を使えるということはフィールの能力は相当なものだ。
 もし、能力に関わらず変身しようとすれば、力は暴走し意志を乗っ取られてしまうだろう。
 その後者にカナリアは不安だった。
 いくら目の前のマグナディウスが強いからと言っても自分を犠牲にしてまで勝ちに行こうとすのだろう。それがものすごく不安だった。
 しかし、それは無用な心配だった。
「カナリア」
 背を向けているデーモンから低い声が聞こえた。しかし、しゃべり方は元のフィールそのままだった。
「すまないが、クローを貸してくれないか?」
 背を向けたままだが、カナリアは安堵を得た。
 すぐに手にはめているブラインドクローを外すとフィールに向けて投げた。
 ブラインドクローはきれいな弧を描き、フィールの元へと届いた。
 放物線を描き、フィールの元へ飛んでいくが、飛距離が足りない。それをフィールはわざと翼で弾き、飛距離を伸ばしブラインドクローを受け取った。
「ありがとな。……それとカナリア」
「はい」
「力の加減が難しい。ここを去る方が懸命だが、無理なら壁際にいろ」
「わかった」
 カナリアは柱に身を隠した。
 それをフィールは耳で確認しながら、ブラインドクローを両手にはめ、二,三振って見る。
 ……扱いやすいな。感謝するぞゾルバ。
 マグナディウスと向き合い身構えながら、
「行くぞ。マグナディウス!」
 口を開き、床を蹴った。
 翼を畳み、大きな体を極限まで下げ、ブラインドクローを両手いっぱいに広げ、挟み込むようにして動かした。
 例え大きな巨体になったとしても、フィールの動きには一切の衰えは無かった。
 まるで矢のように進み、斧のように両手を振りぬく。
 それをマグナディウスはフィールごと飛び越える形で避ける。
 跳躍で頂点に達すると体を捻り、スティングを構え投げた。
 フィールの背に向け一直線に飛ぶスティングだが、フィールは翼を動かし、機用にスティングを弾いた。
 そのまま翼を大きく広げ、減速をしながら振り返る。
 マグナディウスは再度体を横に捻り、着地を狙われないようにスティングを投じる。
「無駄だ!」
 フィールはスティングに構うことなく右腕を大きく振り被り、床に突き立てた。
 まるで地属性魔法イラプションのように床を掘り起こし、大地の波を作り出した。
 波はすぐに高さ二メートルほどに大きくなり、フィールに向け投げられたスティングは波に飲み込まれた。
 大気を食い、床を食い、嵐の波のように突き進み、マグナディウスをも飲み込んだ。
 聞こえるのは廊下を砕くような爆音のみ。
 波はすぐにカナリアの前を通過した。
 距離にして約三十メートルの床は破砕された。
 マグナディウスの姿は完全に土砂に埋もれて見えなくなってしまっている。
「む……少しやりすぎたか?」
 まったくわびる気持ちもなしに跳躍してカナリアの隣に立った。
「カナリア、ケガの具合は大丈夫か?」
 変身しているおかげで、普段頭一つ分低いカナリアがさらに低く見えた。
「ええ、大丈夫だけど……」
 左脹脛を見れば、出血は止まっている。
 カナリアは彫り返された廊下を追い、土砂の山に目を向けた。
 床板や、土など様々なものが飲み込まれ、山を作っていた。
「死んじゃったの?」
 いくら仲間を殺したからと言っても、人が死ぬ事はあまり好ましく思わない。
 例え、それが敵であっても……。
「あれぐらいじゃ死にはしないだろう」
 フィールも土砂の山に視線を送り、気配を探るが、無であった。
 しかし、横に居るカナリアの様子が少しおかしな感じがした。
「どうした?」
 カナリアへ見下ろすのではなく、顔を傾け見てみると、何か思いつめたような表情をしている。
「あいつのせいでみんな死んじゃった……」
「ああ、そうだな。戦いとはそういうものだ。……そう割りきるしかないんだ」
 酷なことを言っていると自分でも分かった。でもそうするしかないのだ。いくら悔やもうと、死者は生き返りはしないのだから……。
 フィールは土砂の山に近づき、おもむろに手を突っ込んだ。
 そして、何かを掘り当てたかのように山の中から手を抜くとマグナディウスの腕が現れ、顔、胴体と山の中から引っ張り出した。
 相当のダメージになったのだろうか、マグナディウスはぐったりとしており動こうとはしない。
「やはり、少しやり過ぎたか……まぁいいか」
 マグナディウスから武器を剥ぎ取り、マグナディウスを左肩に担いだ。
「表に行くぞカナリア。マグナディウスがこの軍勢を率いて来たとは到底思えない」
 カナリアを右腕一本で抱えるように持ち上げ、床を蹴った。


 ディルたちが帰還した事により戦況は大きく変わった。
 しかし、来る前までに受けた被害が治るわけではない。
「敵は南門から攻めて来ている。東門はほぼ無傷からすると、敵は南一点に戦力を集中させていると、判断できるが、少数部隊が城に潜入している」
 ガイムがディルに近づき、状況を手短に説明していく。
「分かった。魔法部隊は攻撃よりも回復、補助を優先し、マナを保て! エルフたちは前線の支援だ! 前線部隊は深追いはするな! 後方を確認しつつ前進だ! 城内に侵入した敵はほおっておけ! フィールとシグザが何とかするだろう」
 皆が心の中でそんな適当な…と呟くが、ディルの適当は信頼であった。
「カオス、出過ぎだ! 囲まれるぞ! カラス! マナの使い過ぎだ温存しろ!」
「ひゅ~的確な指示だねぇ。マナを温存しろか……なら、言って来いガーゴイル!!」
 黄土色をしたガーゴイルがゆっくりと動き出した。動きは遅い方だが、放たれる拳は、一振りで3人はなぎ倒していった。
 ディルは辺りを見渡し、一人の兵士に近づいた。
「ハルキヨ。何人か連れて城内に侵入した敵を足止めしといてくれ。シグザたちが駆けつける前に、医療所がやられては元も子もない」
「了解しました」
 足を揃え、敬礼をするとすぐに駆け出した。
 その姿を見送った後でディルはダマスカスソードを振りかざし叫んだ。
「さぁ、もう少しだ! 全員気を引き締めろ!!」
 その声で皆の士気が大きく上がった。


 ケント城食堂。ここは緊急的に医務室と化し、次々に患者が運ばれてくる。
 その中で、女性をベッド(テーブルに毛布を敷いただけの物)に寝かせている。
「んじゃジーク、サクラを頼んだぞ」
 今は完全に意識を失っているサクラを寝かせながら、シグザは目の前の初老のウィザード、ジークに言った。
「はぁ……ワシは回復よりも攻撃魔法の方が―――」
「ジークちゃ~ん! エルも宜しくおねが~い!」
 ジークの愚痴を塞ぐように同じぐらいの背丈のエルを背負ったユウが飛び込んできた。
 サクラの隣りに同じように寝かせて、
「シグザ、サクラをこんなめに合わせちゃダメじゃないの!」
「だーうるせえ。俺が駆け付けた時にはもうこんなんだったんだよ」
「そんなこと知らないもん。全部シグザの責任だからね! ジークちゃん早く治してあげてよ」
「だから何でワシがこんなことを……」
 そんなふうにぶつぶつ言いながらも患者にヒールを唱え、包帯を巻いていく。
「あ、シグザ総隊長殿。こんなところに居られましたか」
 廊下から声がして振り向いて見ると、次に現れた人物はシグザの部隊に所属しているマークスという男だ。簡素な鎧に身を包み、右手には長さ2メートルほどもある槍、フォチャードを持っている。
「どうしたマークス?」
 医療所と化している食堂を横切り、シグザの一歩手前まで近づき、軽く敬礼をした後、
「どこに居られたのですか!? いえ、今はそんなことはどうでも良いです。早く前線に御戻り下さい!!」
「前線はフィールに任したはずだゾ」
「それが、フィール隊長まで居なくなってしまったんです。今探しているのですが、見つからず……」
「あ~分かった。なら走りながら現状を教えてくれ」
 壁に立てかけた武器を掴み、廊下へと走り出した。
 残ったジークはケガの具合が悪いサクラを優先してヒールを唱えている。
 もう一人残ったユウは……
「ねえ……ジークちゃん」
「何でしょうか? ユウ姫。それとちゃん付けは止めてください」
「ええ~!? そっちのほうがカワイイじゃん!」
「問題外です」
「ちぇっ」
 ほほを膨らませながらそっぽを向いた。
「それより、何か聞きたかったのではないのですか?」
「あ~そうそう。でさぁ」
 一息置いて、ユウが珍しく真剣な眼差しをジークに向け、
「私の持ち場ってどこ?」
 ジークは誤ってキュアポイズンを患者にぶち込んだ。


 シグザとマークスは運ばれてくる患者を避けながら廊下を走っている。
「今現在城外には、ディル王子を始め、ガイムさん、カイムさん、カオスさんにマリアさん、他、カラスさんにセントビートさんたちがラスタバド軍と戦ってます。……何か、炎のような熱いものを感じますが、気のせいでしょう。先ほど医療所に居た方以外では、フィールさんとカナリアさんは所在が分かりません。……いえ! カナリアさんは居ました! 目の前に居ます! 大変です! どさくさに紛れて見たことも無いモンスターに拉致られてますよ!! やっぱりここは華麗にカナリアさんを助けてポイントを稼ぐべきでしょうか!?」
「とりあえず落ち着けマークス。後半言っている意味がよく分からん。それに、カナリアはフィールのものだ。お前がいくら頑張ろうと無駄―――」
 シグザの言葉とともに打撃音らしき音が響いた。
「あれ? シグザ総隊長殿?」
 その音とともに横に居たはずのシグザが見えなくなった。が、すぐに後ろから現れた。
「おい! フィール! 問答無用で殴るんじゃね~!」
「ちっ…お前を殺したところでバカは直らないのは当然のことか」
「んなことはどうでもいい! それよりもフィール! お前そんなところで何してやがる!!」
「シグザ総隊長殿…それじゃー自分がバカだって否定してませんよ」
 マークスが密かに突っ込むが、二人は無視をした。それどころではないのだから。
「それはこっちの台詞だシグザ! ディル王子の護衛はどうした!!」
「それはお前に任しただろうが!」
「知るか! 俺はそんなこと聞いていない!」
「んだとごら!」
「それよりも、シグザ総隊長殿。よくフィール隊長だって分かりましたね」
「そりゃーお前、こいつはあくまで俺の部下だ。それを上司である俺が―――」
 シグザが何かを言っているが、二人は軽く無視した。
「ところでマークス。こいつを頼む」
 左肩に担いでいたマグナディウスをマークスに放り投げる。
「ごら! 無視するな!!」
 シグザの叫び声が聞こえるが、無視をする事にした。
「ぎゃ!」
 マグナディウスを受け取ろうと構えるが、その重さに押し潰された。
「あ、すまない。そいつを逃がすなよ! ラスタバドの一味だからな!」
 後方へ消えていくマークスへ告げ、再び足に力をこめる。
「シグザ速く走れ! お前が遅れるとまたケガ人が増える」
「こっちは生身の肉体だゾ!!」
「なら掴まれ」
 フィールがシグザに向け空いた左手を差し伸べた。
「え?」
 突然のことに、シグザはきょとんっとしてしまった。
「早くしろ」
 急かすように左腕をさらに伸ばしてくる。
「お前って意外と優しいとこが―――」
 目にうっすら涙を浮かべ、差し伸べられた左手へ右手を伸ばし、掴もうとした瞬間、逆に掴まれた。
 問いが脳裏をかすめるよりも早く、掴まれた腕が引き寄せられ、前に力がかかり、そのまま前方へ投げ飛ばされた。
「ぬおおぉぉぉ!!」
 ドップラー効果と音の反射で、シグザの声が一層やかましく響きながら、廊下の先にある窓ガラスへ飛んでいく。
 手を伸ばそうにも、柱はまるで避けているかのようにかすりもしない。
 足を動かしても虚空を掻くばかりである。
 もちろんシグザには空中で体制を立て直すための翼などあるはずが無い。
 そのまま窓ガラスを突き破り外に放り出されようとする瞬間、逆に外側から内側へ向け窓ガラスが破砕した。
 飛び込んできたのはラスタバド兵だ。
 しかし、飛び込んだ瞬間に目の前にはシグザの体。もちろん避ける事も受け止める事もするまえに、シグザの体ごと外に放り出された。
「うし、タイミングばっちし」
 シグザに続き窓から飛び出し、何かを踏んづけた。
 先に飛び出したシグザの体だ。
「シグザ。そんなところで寝ていると風邪を―――バカだから無理か」
 翼を大きく動かし、夜の闇へ羽ばたいた。


 空は闇に覆われ、まるで闇に捕まった星たちが助けを求めているかのように、小さく輝いている。
 その中に、太陽の光に照らされ、姿を現している月の姿は無い。
 新月なのか、見える時間がずれているだけなのか、今は問う時ではない。
 前者にしろ、後者にしろ、今この時には好都合なのだから。
 フィールは翼を大きく広げ羽ばたかせていた。
 目の前に広がるのは夜の闇に光を失った森たちだ。
 ケントはかなり内陸にあるため、海は見えない。しかし、南にはケント城下町、北には昼間にカナリアと共に買い物へ出たギランの町明かりが見える。
「カナリア」
 右腕にしがみ付くようにくっついているカナリアに声を掛けた。
 しかし、彼女は高さが怖いのか、両目をしっかりと閉ざしている。
「目を開けて見ろカナリア」
「怖いからいい」
 本当に怖いらしく、顔を腕に埋めるようにして視界を閉ざしている。
「下を見なければ大丈夫だ。いいから目を開けてみろよ」
 カナリアはゆっくりと目蓋を開けて見る。
 恐怖感もあったのだが、今ははじめて見る空からの景色を見たいという好奇心の方が強かったからだ。
 そして、開かれた視界の中でまず飛び込んできたのは夜空に瞬く星たちだった。
 大きくはっきり見えるものから、小さく今にも消えそうな光と、様々だった。
「まるで歌っているみたい」
 そして視界を少しづつ下げていくと、見えたのはケントの城下町の光だ。
「月が出ていればもう少し遠くまで見えるんだけどな」
 少し残念に思うが、致し方ないことだ。
 カナリアの表情を見ると、先ほどまで嬉しそうな表情が、今は違う顔をしていた。
「どうした? カナリア」
 様子が気になり声を掛けて見ると、カナリアは右腕を伸ばし、ある方向を指差した。
「あれは……なに?」
 震えるような声だった。カナリアが震える元を確かめようと指を刺した方向を確認するが、夜の闇で見ることが出来ない。
 そこでフィールはエルフとしての力を行使した。
「エルヴンビジョン」
 僅かな光を捕える事が出来るようになるエルフ族の力だ。
 この世には完全に密閉された空間でない限り、光は存在するのだ。ただ、人間の目にはそれを捕える事が出来ないだけである。
 それを強化したのがエルヴンビジョンなのだ。
 すぐに視界には微かな光を捉えるようになった。
 おかげでカナリアが刺した方向にあるものを捕えた。
「……何だ……あれは」
 フィールは我が目を疑った。
 見えたものは、空を固まりとなって夜の闇を飛ぶコウモリの姿、ダイアーバットの大軍勢だった。
 数にして裕に四桁は行くだろう。
 ダイアーバットは単体としては弱いのだが、数が集まれば強敵となる。
 しかし、雑魚がいくら集まっても雑魚には過ぎないのだが、中には黒い影の固まり、ダークエレメンタルの姿があるのだ。
 さらにフィールの耳にはあるものを捕えた。
 下の方で戦う者たちの声の他に、遠くから聞こえる足音だ。
 いくらエルフの耳だからと言っても、全てが聞こえるわけではない。まだ距離はあるはずなのに、確実にこちらへ近づいている足音が聞こえるのだ。
 そのことに脅威した。
 足音は十や百の桁ではない。千を越えるような桁だった。
「大変だ……カナリア! しっかり捕まってろ!!」
 カナリアの返事を待たずして、フィールは地表へと急降下を開始した。


 一方地上の方では、
「ラスタバド軍が撤退し始めているぞ!」
 一人の兵士が叫んだ。
 見れば奥のほうにいる奴らから次々と撤退している。
 そのことで皆が喚起に沸きあがる中、少数の人数は疑問を抱いていた。
「王子。これは一体……」
 一番に疑問を口にしたのはガイムだった。
「ガイムも気づいたか」
 二人が抱く疑問は同じだった。
「奴らはなぜ撤退する……いくら状況判断でもまだ早すぎるだろう……」
 いくら考えても、答えは出なかった。
「ヒントとすれば、相手の首領が現れなかったことだな……あれだけの人数が頭無しで動くとは到底思えない。しかも、アデンに攻め込むふりをしていた……」
 いくつか言葉を交わすが、やはり答えとなるものが姿を現さなかった。
 代わりに姿を現したのは、
「ディル王子大変だ!」
 大きな翼に、紅い体、強化された肌に地獄を思わせる黄色い眼光。
 デーモンに酷似したものが空から舞い降りたのだ。
 皆が動揺し、新たな敵だ、っと叫ぶ中、ディルはいたって冷静だった。
「その声は……フィールか? 今までどこに居た」
「そんなことはどうでもいい! 大変な事態が起きた!もう時期ラスタバドの大軍勢がここへ来るぞ!」
『何!?』
 フィールの言葉に皆が驚きをあらわにした。
「数はどのくらいだ!?」
「少なく見積もっても…二千は居るだろう」
 右腕に抱えたカナリアをゆっくりと下ろしながら、フィールは答えた。
「今この城の戦力は百ぐらいしなない。もしも二千なんて数の敵が現れたら、城下町の方まで被害が出るぞ!!」
 ディルはその事態を考え、すぐに声を張上げた。
「すぐに動けるものを集めろ! 城下町へ行き、皆をギランへ!!」
 数が圧倒的であるため、ケント城では危険と判断し、皆をギランへ向かわせる事にした。
「マークス! お前はすぐにギランへ向かい応援を呼んできてくれ。他のものは人々を護衛し、無事にギランへ辿り着いてくれ!」
 ディルの指示に皆はすぐに動いた。
 動ける兵士は城下町へ向かい、皆を起こし隊列を組んでギランへと向かった。
 老人に手を差し伸べ、ケガ人には肩を貸し、すぐにギランへと進み出した。
 残ろうとするものを殴り飛ばし、無理にでも連れていった。
 ケントはあまり大きな町ではないため、ものの十五分程度で城下町、ケント城ともに人っ子一人居なくなった。残ったのは戦えるもの、約五十名を残して、他のものはみなギランへと向かった。
 周りにはまったくの気配がないが、遥か遠くにはこちらに向かって大軍勢が向かっているだろう。
 皆が緊張し、口を開こうとはしなかった。
 ディルは皆が見える位置に立ち、想いを打ち明けた。
「みんな…よく聞いてくれ。我々はいま絶望的な危機に面しているだろう。恐らくギランの増援は間に合わないと思う。……言っている意味が分かるな。今夜ケントは落ちるだろう」
 ディルからその言葉が出た事で、皆が息を飲んだ。
 確かに、ケントに残った人数は五十、一方攻めてくるラスタバド軍は二千にも及ぶ。例え、数え間違いであっても、桁を間違える事はないだろう。そのことを考えると、絶望的だった。
 そんな中でも、ディルは言葉を続けた。
「国や城は作り直せばいいんだ。今は生きるほうが大切だ。だから……みんなは逃げてくれ」
 その言葉で、一人の男が口を開いた。
「何言ってやがる。ディル」
 みなの絶望を打ち破るように口を開いたのはシグザだった。
「今夜、何が落ちるって? 誰が逃げるって? ハッ! ぬかしたこと言ってんじゃねぇよ!」
 その敬語も何もない言葉にカイムが口を挟んだ。
「おいシグザ! ディル王子に向かってなんて―――」
「止めておけカイム」
 しかし、言葉の途中でガイムに止められた。
「何でだよガイム兄さん」
「黙って見ておけ」
 ガイムの言う通り、みなが固唾を飲んで見守っていた。
「この城はいったい誰のものなんだディル? お前のものか? ラスタバドのものか? 違うだろうが!! 誰のものでもない、この城はケントに住む皆のものだからな。だから俺は今まで剣を持った。みんなの為に戦ってきた。しかしディル……今の俺には剣を持てないな」
 右手に持つツルギを地面に突き立て、更に声を張り上げて叫んだ。
「壊されたから作りなおすのか! 生きているから何だって言うんだ!」
 シグザの言葉に誰もが口を挟まなくなった。
 ディルも口を開こうとするが、すぐに開けるのを止める。
「いいか、ディル。昔、ガイムからこんなことを聞いた。この城はお前の先祖が当時の人と力を合わせて長い年月をかけて作ったってな! そんな歴史も! 当時の人々の想いも! お前は作り直せると思っているのか!?」
「………」
 ディルは反論できなかった。
 先祖の思いは日記や記録を読めば分かるだろう。しかし、作った人々の思いまでは分からない。
「そうだ。歴史と言うものはそんな軽いものじゃない。でもな、守ると言うのは簡単だ。残せばいいんだからな」
 言うだけ言うと、シグザは地面に刺したツルギを引き抜き、歩き出した。
「長い付き合いだったが、俺は血盟を抜けるぞ。じゃあな」
 シグザはそう言い残して城外に向かって歩き出した。
 その姿を見ていたフィールも口を開いた。
「確かに、どうせ潰れるなら俺もさっさと抜けちまうか。カナリア行くぞ」
 まだ変身が解けないのか、大きな翼をマントのようにひるがえし歩き出すと、後を追うようにカナリアも歩き出した。
 そして、多くの人が三人の後に続いた。

 残されたのはディルたった一人だけだった。


第五章 絆

〓〓〓 あとがき 〓〓〓
第4節戦乱をお送りいたしましたw
今回の見所はどこだろう?
う~ん やっぱ最後かな~
シグザがディルを説得?しているシーン
ちょいと考えるのに時間かかりましたw

にしても……フィール強ッ!?
何でデーモンに変身でイラプションまがいなことやってるんだよw
しかも空飛んじゃったw
もうそこは深く追求しちゃダ~メダメ~w(古ッ!w)

さーケント城にたった一人残されたディル王子!!
ラスタバド軍をたった一人で立ち向かうのか!?
なんか先が読めそうな展開だが、いいか皆の衆!

   先読み禁止!
   ( ノ∀`)

こう御期待!!


© Rakuten Group, Inc.